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6/3/2007 ほんとはずっと
1 思わず目を逸らした。 いつもの悪い癖だ。 思いも寄らず視線が合うと
反射的にしてしまう。 きみの表情からは、
僕がそこにいることへの驚きと、 「元気?」と訊ねているのが、 一瞬のうちに読み取れた。 予想外のきみの反応に、
僕もまた驚き戸惑い、 結婚式が終わるまで、 きみのいる方に顔を向けることが できなかった。 いつもの悪い癖だ。 2
ようやくきみと話すことができたのは、 きみも僕も駅へと向かう帰り道でだった。 その日既に2組の結婚式に参列し、
次のアポイント場所へと向かうべく、 30度に達する陽気の中、 スーツ姿で駅へと急いだ。 途中にある歩道橋で、 先に式場を出ていたきみに追いつく。 その少しやつれたように見える後ろ姿に
懐かしい名前を呼んでみた。 振り向くきみ。
音信不通だった一年の月日が嘘のように、
再会はあっけなく始まった。 3 「あの時ね、いろんなことが限界だったの」 言葉とは裏腹に、きみの表情は
穏やかで、安らぎに満ちていた。 「それは…、絵を描くことでも癒せなかった?」
「ううん。
それでずいぶん良くはなったの。 いい出逢いにも恵まれてね」 「そう、それはよかった」
「キミィちゃんこそ、大丈夫だった? 『助けてほしい』って最後のあれ、 わたし、返事できなかったけど」 「ああ、あれなら、もういいの。
もうどうしようもないから」 「そうなの?
それって…私のことが関係している?」 「相変わらず、加害妄想強いね(藁
関係ないから安心して。 まあ、それについて話すと長くなるから」 「話せる範囲で簡潔に話してみて。
どうかしたの?」 「そうだな…。実はね、」
言葉数をそれほど重ねなくても、 お互いの心の奥にあるものを 短時間で引き出し、慮れる。 きみの存在がどれほど大切だったのか。 ふたりで改札を抜ける頃には、
充分過ぎるほどに思い出していた。 4
「こんなこと言っていいのか分からないけど」
躊躇いながら、打ち明ける。
「きみへの恋愛感情はとうの昔に無くなっていたんだ」
「よかった」
「よかった?」
「だってさ、厄介じゃん」
「ほんと失礼だよな(藁」
ふたりで
笑いながら、電車に乗る。
厄介というのがどういう意味かは きみのその顔を見れば分かる。 「僕としては罪悪感持ってしまったけどね。 勝手に好きになって、勝手に冷めてしまうなんてさ…」 「そろそろ自分を責めること止めたら?
…でも、それ止めたらキミィちゃんじゃなくなるか」 これほど、僕のことを察することができる人が 他にいるだろうか。 返すのにうまい言葉はすぐに見つかりそうもないが、 別れの時間はすぐ目前に迫っていた。 5
「ずっとね、 すっと謝りたかったんだ。 …ごめんね」 「私も。
…ごめんなさい」 「…」
「じゃ、ここで降りるから。 じゃあね」 「じゃ、がんばってね」
「キミィちゃんは、がんばらないでね」
ひとりで 電車を降りるきみ。
降りたホームのすぐ目の前に改札があった。 計算してその車両に乗ったらしい。 颯爽と改札を抜けていくきみ。
電車のドアが閉まる。 きみは振り返り、小さく手を振る。 電車が発車する。 くるりと家路へと向き直すきみ。 「元気でね!またね!」 きっと、あの時きみも心で呟いていたよね? 連絡先も交換しなかったけど、 またいつか逢えると確信しているのは、 僕だけじゃないよね? がんばらないよう、がんばるね。 あれ?それじゃだめかな? ね、教えてよ。
この短編をcoffeeに捧ぐ Comments (4)
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